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HUNGER ハンガーのMikiMickleのレビュー・感想・評価

HUNGER ハンガー(2008年製作の映画)
4.5
実話に基づいた映画。

1981年。サッチャー政権により、北アイルランド紛争に関わった、もしくは、テロの容疑があるとして収監されているIRAの革命家たちが、「政治犯」としての称号を取りけさられる。
それに抗議したIRAの囚人たちは、ブランケット・プロテスト(政治犯でなく一般の囚人と同じ囚人服を着なければならないことに対抗して、全裸で体も洗わず、汚い毛布1枚で過ごす)やダーティ・プロテスト(自らの糞尿を壁一面に塗りつける。これは、トイレに行く為に牢屋から出ると看守に殴られることに対抗したらしい)を続けるが、抗議は一向に通らない。

自分たちの信念を貫くため、ボビー・サンズを中心としたメンバーは、遂に、一切の衣食をしないハンガーストライキを行う事を決意する……自らの命をかけて…


この映画、セリフはほんとに少ないんです。
上に書いたストライキの事も、なんの説明もない。
ビール4本のんで酔って眠かったけど、夜中から見始めたにもかかわらず、一気に目が覚めた!!

途中、サンズが神父に信念を語る10分以上の怒涛のワンカットの迫力、凄かった。
マイケル・ファスベンダー演じるサンズがガリガリに痩せ細って死に向かっていく様が見ていてほんとにしのびなかった……

信念のためというよりは、正直、狂気を感じずにはいられませんでした。

ただIRAの側から撮っているのではなく、看守らの葛藤も映し出されていて、偏りのある映画になっていないのが素晴らしい。

手のアップが非常に印象的。
囚人を殴って傷ついた熱い手と、それに落ちて溶ける雪、その血で汚れた手を必死で洗っているシーン、牢屋内に入りこんだハエをそっと外に逃がす手…
そこに、人間を感じました。
うんち塗りまくっても、汚く感じなかった。

ラスト。それまで淡々と事実を描いてきたのに、サンズの心情を映像で描いていて、素晴らしかった。

事実を見ておくべき映画。
IRAというと、つい爆破テロとかを想像してしまうけれども、こんな事がおこっていたんだと、知ることが出来た

本年度アカデミー賞受賞作「それでも夜は明ける」のスティーブ・マックイーン監督の、2008年初長編映画。カンヌカメラドール受賞。
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