デニロ

海を感じる時のデニロのレビュー・感想・評価

海を感じる時(2014年製作の映画)
4.0
市川由衣が行きずりの男の部屋で手首をテープで巻かれ、ネクタイで目隠しをされながら情事に耽っている場面で隣席の女性が涙を拭っていた。

三木聖子の「まちぶせ」。荒井由実の満月の夜の女が出ている一篇。「真珠のピアス」「魔法の鏡」「ツバメのように」「白いくつ下は似合わない」等々同様恐ろしい。この歌1曲でワンシーン。その歌詞と共にしかも本作の全篇を貫いてしまう。
この歌から時代は1970年代後半に差しかかる頃からの数年と想像される。居酒屋の品書きを見るとアジのたたき300円。そんなもんだったかな。ほぼ同世代だけど、高校時代喫茶店でブルマンを注文したり、通学にバーバリーのコートは着なかった。

カメラを据えて演技者の情感を出すことに成功している。意味不明の都合のいい女と、駄目な男。女はあくまで何らかの形で男に役立てばいいとかんがえている。出会えば情交、抱いてくれるまで帰らない。女の体に触れてみたかった。誰でもよかった、という男に。どこかで聴いたような台詞だ。女は最後まで男のことが好きだと呟く。市川由衣は制服を着て少し猫背気味にしていると、おどおどした女子高生そのものだ。

流行歌を流したり、エンディングの下田逸郎は荒井晴彦の印。神代辰己の映画的記憶を呼び起こすシーンがあり笑いどころなのだが、周囲の観客はじっと見つめていた。笑いかけてやめる。

原作は女性の気持ちを表すに比喩表現が長けていて脱帽したが、本作の女性陣の悪戯な様も目に焼き付いてしまう。

隣の女性の涙は何だったのだろうか。
銀杏の木が眩しかったのだろうか。
映画の女以上に謎だ
デニロ

デニロ