りょう

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密のりょうのレビュー・感想・評価

3.6
 中学生まではそれなりの成績で進学校の高校に合格しましたが、ほとんど自習しない学生だったので、当然のように数学で挫折しました(当時はベルリンの壁崩壊とか湾岸戦争勃発とか、NHKの報道番組ばかり観て勉強どころではなかったです。苦しい言い訳ですが…)。それ以来は文系一筋なので、数学者を主人公にした映画は無意識に避けていたと思います。
 そんな数学アレルギーがあっても、この作品を7年以上も放置していたことを後悔しました。ほぼ数学の知識がなくとも物語の構造がちゃんと理解できる親切な脚本です。
 すべてのエピソードが事実なのかどうかわかりませんが、ソ連の二重スパイの顛末とか、思わず「そんなことできるわけないじゃん」と言いそうになったチューリングとミンギスの密約である大嘘(内緒で解読した暗号を統計で解析して…のくだり)は、なかなか創作でも発想できないと思います。それを実行して50年以上もトップ・シークレットで暴露されなかったとは、MI-6も恐るべしです。
 また、天才数学者の偉業というだけでなく、彼の属性を許容しない時代背景が重層的なテーマになっているので、ヘタをすると物語のピントがぼやけてしまいがちですが、そうさせない脚本と演出が素晴らしいです。
 ミンギスを演じたマーク・ストロングは、ガイ・リッチー監督の作品でも観ていましたが、なかなか印象深い俳優さんです。若いチューリングを演じたアレックス・ロウザーは、2019年の「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」の主役の俳優さんでした。どちらもいいキャスティングです。
 音楽もなかなか印象的でしたが、アカデミー賞常連のAlexandre Desplatが担当していました。2020年の「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」の劇伴も好きです。
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