うめ

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密のうめのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

 3つの時間軸があったが、どの時期も暗号やエニグマという共通点がありつつ、それぞれ分かれているため、とても分かりやすかった。また暗号解読という血なまぐさい戦場とは離れた話でありながら、途中で実際のニュース映像を挟み込むことでチューリングのことも含め実際に起きた出来事であること、そうした歴史の重みを感じることができた。
 個人的には終盤における、ジョーンのチューリングに対するセリフがとても良かった。「あなたは普通じゃない。だけど、普通じゃないあなたがいる世界は素晴らしい。」というようなセリフ。以前、どこかで見た「運命には逆らえないが、自分で「生き様」は選べる」という言葉を思い出した。アラン・チューリングは天才であるために人とは異なっており、さらに公表すれば罰せられた同性愛という性的嗜好を持っているために「普通」とは違うことを、人とは関わり合いを持とうとしない消極的な姿勢に拍車をかけていた。だが、クリストファー、エニグマ、ジョーンを通して、彼は彼らしさを保とうとしていたのである。歴史上、なかなか明らかにされなかった、認められなかった彼の「生き様」がこうした作品になるのは非常に意義深いと思った。
 また、もちろん脚色が施されているのだが、私が少しアラン・チューリングに関して調べただけでも、実際の出来事に忠実、あるいはその出来事を表現しているシーンがいくつかある。チューリングがジョーンの助言を聞いてチームの皆に渡したリンゴにもそれなりの意図があるのでは…と思ってしまった。
 また全体的にキャスティングがいい。カンバーバッチやキーラ・ナイトレイはもちろんのこと、チームメンバーや彼らの周りの人物はこの作品の雰囲気をうまく表現している。個人的にはやはりマーク・ストロングの存在力、演技力に惹かれた。
 ただひとつ難を挙げるならば、クスッと笑えるようなコミカルなシーンが盛り込まれているが(そのために全体的に見やすくなっていることも事実だが)、その分、チューリングの苦悩やその重みが若干薄くなってしまったように感じてしまったのは残念である。

<追記> 2015. 5. 20.
 近頃、2度目の鑑賞。ストーリーは知っていたので、細部を観るようにした。やはり脚本の上手さに脱帽だが、同時にテンポの良さに改めてすごさを感じた。3つの時間軸がありながらも、それをアラン・チューリングという一つの軸に集約させることで全てが混乱することなく進んでいる。またエニグマの解読、ソ連のスパイがいるというスリルも含んでいるので、エンターテイメント作としても面白い。とてもうまい。
 後は学生時代のアラン・チューリングを演じた子の演技が思っていたよりもうまかったことだろう。言葉が詰まってしまうところや微笑みなど、カンバーバッチが演じるチューリングとちゃんと繋がっているところがすごい。欧米の子役のレベルに改めて驚いた。
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