かたゆき

毛皮のヴィーナスのかたゆきのレビュー・感想・評価

毛皮のヴィーナス(2013年製作の映画)
2.5
「毛皮のヴィーナス」――。
それはマゾヒズムの語源ともなった、19世紀オーストリアの作家マゾッホの代表作だ。
そんな愛と被虐と陶酔の物語を舞台化しようと試みる野心的な演出家トマのオーディションに、とある無名の女優が大幅に遅れてやってくる。
すっかり日も暮れ、劇場に残っていたのは準備に余念がない演出家である彼のみ。
恋人とのディナーの約束を控え、当初は断ろうとしたトマだったが、あの手この手で迫る彼女の迫力に仕方なくオーディションをすることに。
とはいえ、相手役の男優はおろか、スタッフは皆帰ってしまい、劇場には自分とその女優しか居ない。
トマは自ら相手の男役を務め、毛皮のヴィーナスを演じてゆくのだが、何もかもを見透かしたような彼女の言動に次第に立場が逆転し始めるのだった……。

いまだ挑戦的な作品を撮り続ける名匠ロマン・ポランスキー監督の最新作は、そんな男と女の愛と駆け引き、支配・被支配、サディズムとマゾヒズムが軽妙に交錯するスリリングな心理劇でした。
確かに、小品ながら円熟味を増したポランスキーの才が冴え渡っている作品であることは僕も認めるところなのですが、さすがに90分はちょっと長すぎるかなぁというのが率直な感想です。
全編に漂う上質なユーモアや気品に満ちたエロティシズムなど、いかにも彼らしいモダンな雰囲気は凄く良かったのですが、ずっと同じような画と遣り取りばかりが繰り返されるので中盤から少々退屈に感じてしまう。

これで、肝心の主演女優さんが目が覚めるほどの絶世の美女とかだったらまだ良かったのですが、いかんせんこの女優さんが少々お歳を召しているうえにちょっぴり微妙……(解説によると、この人監督の実の奥さんみたいですね。ごめんちゃい笑)。
うーん、もう少し突き抜けた何かが僕はほしかった。
星2.5。
かたゆき

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