カタパルトスープレックス

砂漠の流れ者のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

砂漠の流れ者(1970年製作の映画)
3.9
サム・ペキンパー監督のアンチ・ロードムービーな西部劇です。監督の一番のお気に入り作品だったとのこと。へー、そうなんだ。ペキンパーらしい暴力性はほぼないんだけどなあ。

舞台は20世紀初頭のアメリカ中西部。砂漠の真ん中で仲間に水筒を奪われて一人残されるケーブル・ホーグ(ジェイソン・ロバーズ)が主人公です。砂漠を彷徨い、砂嵐の中で水源を発見します。その水源をもとに街をつなぐ中継地点のビジネスを始める主人公。裏切った仲間が再び訪れるのを待って、復讐の機会を待ちますが……という話です。

中継地点というのが象徴的ですよね。旅人たちが通り過ぎる場所。そこに留まる主人公。愛する人ができ、仲間もできる。しかし、彼らにとってもケーブル・ホーグは中継地点でしかない。いつかは離れていく。テーマとストーリーはボクも好きです。

それにしても映像技術的にはペキンパー監督の特徴が全く現れていないのが不思議な作品です。スローモーションもカットバックもない。リアルアクションもない。唯一、ペキンパー監督らしいのは冒頭のトカゲくらい。あれが唯一の暴力性かなあ。

自分の得意技を封印してまで、この作品でペキンパー監督は何を語ろうとしたんだろう?自己ベストと言うくらいなのだから、きっと何かあるんだろう。でも、ボクにはそれを感じ取ることができませんでした。悪い映画じゃないんだけど、ズバッと刺さる物はなかったかなあ。