銘茶

それでも恋するバルセロナの銘茶のネタバレレビュー・内容・結末

それでも恋するバルセロナ(2008年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

概要
バルセロナで繰り広げられる一夏の群像劇。頭で恋愛するタイプのヴィッキーと感情の赴くまま恋愛を楽しむクリスティーナは、恋愛観は違えど親友同士。婚約者がいながらも、画家のアントニオとのロマンチックな恋愛に惹かれてしまう自分に戸惑うヴィッキー。一方クリスティーナは、アントニオと彼の元妻マリアの三人である種の恋愛関係を結ぶ。幸福で安定した生活を送っていた三人だが、それでも何かが足りないと思うようになったクリスティーナは自ら彼らから離れる決心を下す。クリスティーナがアントニオとの同居を解消した後、ヴィッキーは再び彼と関係を結ぼうかと葛藤するが、精神を病んだマリアが撃った銃弾に被弾し、結局有耶無耶のうちに新婚の夫と共にニューヨークへ帰国する。クリスティーナは自分に足りないものが何なのか、答えを求め続ける。

感想
予告と前評判からウディアレンらしくない明るいだけのラブストーリーだと思って視聴を避けていたのですが、蓋を開けてみるとザ・ウディアレンな映画でした。話の展開はやや強引なのに、登場人物の会話やそれに至った偶然の連鎖を丁寧に描写しているため全く違和感を抱かないうちに物語が激しく動いていきます。以下思ったこと。

・結局変わらなかったヴィッキー
アントニオとの出会いで今まで気づかなかった自分のロマンチックな一面に気づき、夫を捨てて彼との恋愛に飛び込んでしまおうか悩むも、結局マリアの発砲によってそれどころではなくなってアントニオと出会う前に自分が思い描いていた理想の生活に戻る。どれだけロマンチックな展開があってもまるで夢が冷めるように現実に戻っていくラストはウディアレンぽいなあと思いました。

・クリスティーナ、マリア、アントニオの名前をつけられない関係
クリスティーナが「何でもかんでも定義づける必要はない」的なことを言っていて、新しい恋愛観だなあと思いました。フランスの哲学者 サルトルとポーヴォワールの関係にも通じるものがあるように思います。

・才能に悩むクリスティーナ
突出した芸術の才能を持つマリアの前で自分には何もないと改めて自己嫌悪に陥るクリスティーナですが、そのマリアのお陰で写真の才能に目覚めます。この一面を切り取れば、クリスティーナの成長物語としても見ることができると思います。結局この物語からうまれた生産的なことって、クリスティーナが写真というアイデンティティーを見つけたことくらいだと思うので。

・ヴィッキーに自分の姿を重ねるジュディー
ジュディーはある意味将来のヴィッキーの姿と言えるかもしれません。どう抗っても歴史は繰り返す。虚無、、、

・イケおじすぎアントニオ
女の扱い慣れすぎ。メンヘラの扱い慣れすぎ。感情的に暴れるマリアをなだめる姿は恋人というよりもはや父親。複数人の女性に同時に深い愛情を注げるのは、心が豊かで愛情深い人だからだと思います。誰かを愛している時他の誰かのことを忘れているような、よくいる浮気性男ではない。

・ペネロペクルス美しすぎ問題
あれだけ情緒不安定で攻撃的でパラノイアなのにマリアが魅力的なキャラクターに仕上がっているのは、ひとえにペネロペクルスの容姿ゆえかと。それでも物語が進むうちに、彼女の愛情深い面も明らかになっていきます。だからこそクリスティーナが家を出ると言った時激しく取り乱してしまったのでしょう。膨れ上がった愛情をアントニオのようにうまく相手に届けられず、つい相手にぶつけてしまうタイプ。
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