このレビューはネタバレを含みます
その活動の善し悪しは別としても、今から45年前の日本の若者たちはエネルギーが満ちあふれていた。
自分たちが力を合わせれば日本を、そして世界を変えられると本気で考えそれを行動に起こしていた。
大学の学費値上げ反対運動からベトナム反戦、日米安保反対と発展し暴力を伴った学生運動が隆盛を極めた。
本映画で取り上げられた重信房子はそのような学生運動のまっただ中にいた人物だ。
学生運動に参加し、共産主義者同盟に加入。その後、レバノンに渡り日本赤軍を結成。 パレスチナ解放人民戦線とともにイスラエルと戦った。
長らく国際指名手配されていたが、2000年に日本に不法入国し、大阪に潜伏していた際に逮捕され現在は懲役20年の刑に服している。
『革命の子どもたち』は、日本赤軍のリーダー重信房子の娘である重信メイとドイツ赤軍のリーダーウルリケ・マインホフの娘ベティーナ・ロールに焦点をあて、彼女たちが革命家の娘としてどのように波瀾万丈な人生を歩んできたか娘から見て母はどのような存在であったかを語るドキュメンタリー映画だ。
ドキュメンタリー映画の価値とは力なき者の声を代弁することであると考えている私はともにジャーナリストであり、本を出版し、メディアにも積極的に露出している二人に自分たちの生い立ちや母への想いを語らせるという企画自体にはあまり意義を感じなかったが、当時の時代背景を感じることができる映像、そして、母への想いが対照的な二人が日独の対比構造の中でインタビューに答えるという構成は面白みを感じた。
よくアメリカ人の友人にクレイジーだと言われる日本人の行動の一つに「引責自殺」というものがある。
家族や身内の罪を背負い、自らの責任として自分を責め自らの命を捨ててしまう行為である。
儒教思想と「恥」の文化が融合し、身内の罪は自らの罪ととらえてしまうのである。
重松房子の娘の重松メイが日本を初めて訪れたのは彼女が28歳の時。
それまでは国籍の名前も変えて中東を転々としながら過ごしていた。
彼女が「母は国際指名手配された犯罪者」というレッテルに怯えて細々と生きるのではなく、重信メイ個人として、
パレスチナ問題を専門とするジャーナリストとして多くのメディアに登場するのはやはり一神教の国で育った事に由来するように思う。
キリスト教にしろ、イスラム教にしろ
一神教を信仰する社会では、唯一絶対の存在である「God」と「個人」との契約に則って日々の生活が営まれる。
「個」としてどう生きるかを強く意識する。
母は母としての生き方があり、娘は娘としての生き方がある。
これは、日本社会で育っていたら生まれてこなかった考え方だろう。
彼女(重信メイ)は言う。
母(重信房子)の時代には、何か世間に訴えようとすればマスメディアの注目を集めるために事件を起こし、声明文を出し、問題定義をしなければならなかった。
しかし、今は違う。
個人が情報発信をする手段は多様になった。
インターネットで情報や自身の考えを
ばらまくことができる。
海外の人たちに伝えられるチャンスがあり、正義のために戦う別の方法がある。
私もニートが生きやすい社会を創るために、正義の戦いを続けていこうと改めて決意した次第である。