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フリクリのMondeFilmのレビュー・感想・評価

フリクリ(2000年製作の映画)
4.2
 顔がディスプレイのロボットがマジで良い。俺は虚無僧的な造形が大好き。上手くできないロボットの切なさ。カンチ?箱男。とにかくthe pillowsがアツい。Last Dinasour!ベスパ、ギター、勢い、ロック。シド・ヴィシャスのベース攻撃みたいなのみんな好きですよね。劇伴は全部ロックで事足りるのかもしれない。若いうちにしか見ることができない甘酸っぱさ。『ライ麦畑でつかまえて』とか『若きウェルテルの悩み』とか。勢いと暗示のニアミス。描きたいものが描かれた結果ストーリーが導かれる。思春期の病、フリクリ。幼形成熟、子供であることの肯定。ある意味ロック的共同体、勢いの感性。神聖かまってちゃんみたいな。ただ作り手側は割と大人だろうから気恥ずかしさというか...なんとなく岡崎京子の印象もある。それこそ安野モヨコ。小学生の妄想をハイクオリティに仕立てた印象。想像力とアニメ的クリシェの結節。アニメーション表現でのみ可能な世界。個人的にはメッセージ性が曖昧な方が好き。『三つ目がとおる』。愛すべき平成の感覚。知ったような青春。宮台真司的な。ビョーキ、電波、病み。いじめと神様。拡大されて可視化される個々人の苦悩。悩みはわかりやすいといいですよね。明るい『式日』。深淵に見せかける言葉の応酬。高校生が強気出れる相手。アニメ的表現でしか実現し得ない世界観。脚本は不明瞭で構わない、別の世界。音楽はピロウズが担保して印象的なビジュアルで充満する。いきなり漫画へ。ノリはちょっと寒かったりもするけど。下ネタを躊躇いなくいうのが大人みたいなキツさ。演技はたまに棒。こういう勝手で脆いキャラ造形って少し苦手。ハルヒ?ちゃんと実力があってワガママならともかく本作に影響された凡人が一番辛い。ただこんな恥ずかしさを伴う創作を肯定する感じがある。恥ずかしくてもものを作って公開するのを支持するテーゼ。揶揄いとマウントと理解、嘲笑。ニナモリさんはあんまり小学生に見えない。正直深入りしようと思えば色々設定とか掘り下げられるのだろうが、煙に巻く作品性もあってあまり積極的になれない。扱う題材(少年期の性とか)も時代を感じてしまう。平成、非行。それでも音楽と映像は新鮮。
 そもそも全編ピロウズのPVに近い。新海誠?Lo-fi hiphopみたいにコンテクスト無視で簒奪してくる文化と相性がいいのは、そもそもストーリーが曖昧なせいもある。彼氏の弟に付き纏う淫蕩な感じ。理解できないものが存在することについて。ただ雰囲気によるドライブと表裏一体なので危険な面もある。この負の側面を煮詰めると『プロメア』とか。勢いでナイーブな問題を扱うべきではない。2000年。世紀末退廃の感じ。やっぱLainとかと比べるとクオリティが違う。あれはあれでいいけども。この時期のアニメって実写エンディングちょいちょい見るよな。つくねちゃんとか。映画というほど大仰でもなくていい意味で気楽。整合性とか解釈一致とか考察を吹き飛ばすセンスオブワンダー。それこそ『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』とかカートゥーン趣味。
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