dubstronica

ヤング・アダルト・ニューヨークのdubstronicaのレビュー・感想・評価

4.0
今年イチバン期待していた映画。

予告編などで観られる、ニューヨークで暮らす40代のドキュメンタリーフィルム作家のジョシュ(ベン・スティラー)と映画プロデューサーの(ナオミ・ワッツ)夫妻が、20代の駆け出し映像作家ジェイミー(アダム・ドライバー)とダービー(アマンダ・サイフリッド)に出会い、そのピチピチとした魅力にあてられ感化されていく様がなんともオモロいコメディ、では終わらないドラマティックな展開が素晴らしい。

もう何と言ってもアダム・ドライバーは最高で、最近の快進撃はまだまだ続きそう。
『フォースの覚醒』のような大作に出るまでに出世しているがこういう映画にこそ、その魅力は発揮されている。彼が演ずるキャラクターに忍ばせる人懐っこいイノセントさは、ドラマ『GIRLS/ガールズ』でのアダム役でも素晴らしいものがあるが、狂ったイノセント感のある(本人と同名の)アダム役に対し、今回はそれが野心あるイマドキの20代のエネルギッシュさに発揮されていて、作品上必要不可欠な「主人公ベン・スティラーが憧れてしまうほどの魅力」に十分すぎる説得力を与えている。10年代のタイラー・ダーデンと言っても過言ではないと思う。

魅力の発揮の仕方は様々だが、攻めと受けがあるとしたらベン・スティラーは後者。こういう魅力的なパートナーを得た時のベン・スティラーは本当に良くて、振り回されたら天下一品、ストレスを内に内にためて爆発する展開はベン・スティラーでは鉄板だが、妻役のナオミ・ワッツと共に「戸惑う」姿は視線だけで笑わせてくる。女性陣は男性陣に比べると若干一歩下がったポジションから夫たちを上手く支える。同年代のママたちにも、20代のダービーたちにもほどほどになじめない適度な痛々しさを醸し出すナオミ・ワッツも良い味を出していて、その夫婦が自宅で弾けるのがなんとも微笑ましい。あのシーンを観ると、その後の喧嘩やら何やらはなんとかなる!と思える睦まじさだ。

引くに引けない板挟みのような葛藤に揺れ動くジョシュのストレスの矛先はジェイミーに向かっていき、ついには衝突してしまう。その衝突こそがジョシュ自身の踏み出せなかった一歩への起爆剤であったことをなによりラストシーンのセリフが物語っていた。そう、我々はもう十分オトナなのだ。

試写のトークショーで山崎まどかさんが「20代の感想を聞いてみたい」とおっしゃっていたが全く同感で40代から見える20代を20代が見たらどんな感想を抱くのか、興味は尽きない。

今のブルックリンの文化や劇中の音楽、バームバック周辺のシーンなど、補足説明が欲しい事柄はたくさんあるので、パンフレットの出来にもかなり期待している。
dubstronica

dubstronica