春21号

SADA 戯作・阿部定の生涯の春21号のレビュー・感想・評価

SADA 戯作・阿部定の生涯(1998年製作の映画)
4.0
大林節全開の作品

あの大林監督が実際にあった事件、阿部定事件を映画化した作品、
しかし、冒頭にも"わざわざ"あるようにこれは大林監督が阿部定事件を元にした物語で史実に忠実なノンフィクション映画ではないのです。
おそらく監督は阿部定事件から彼女の人生を受け取ったのではなく、物語を受け取ったのだと思う。だからこそ監督もそれをここまで素直に"物語"として映像化したのだと思う。
それまでの監督の作品も劇映画中の劇映画と呼びたくなるぐらいファンタジックな世界が広がっていたが本作はその極地、それまで以上に監督の演出が冴え渡っています。

モノクロとカラーを繰り返す色彩設定
セット丸出しの画面設計、間をとことん嫌う激しいカット割など、ワンカット足りとも演出の手を緩めずそれまであったふとした瞬間のリアリティも徹底的に排除されています。
凄いですね 異常とも言えるかもしれません

ストーリーも正に大林節炸裂といった感じで、阿部定事件をなぞらえながらも戦争が忍び寄るあの時代の混沌さにフォーカスしており、阿部定事件もあの時代において輝いたイノセントなものとして捉えられています。
この作品でも監督が繰り返し語ってきた戦争が語られているのです。

まさかの史実で1番大林節が炸裂しているとは思いませんでした。是非
春21号

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