JIZE

Mr.タスクのJIZEのレビュー・感想・評価

Mr.タスク(2014年製作の映画)
3.4
ポッドキャスト運営の取材でカナダを訪れた冴えない男が車椅子を扱う老人に監禁された事から畸形的なセイウチ人間に肉体改造されるアイロニカルな恐怖映画!!実在性が濃い映画でしたね..特に前半部。敵側に対し実際身近に存在し獲物を黙々と狙ってそうな"実在感の演出"は前半部でズバ抜け賞賛に値した。後半部の失速要因はおそらく老人ハワードが獲物を捕獲し人体実験をし始める初段階の目的達成と共に意識(人格)が崩れ幼児化してく姿勢が映画的に手を抜き面白くない。要するにこの映画は前半部で醍醐味がほぼ終結!!だと..まあ監禁物は監禁する(加害者)側の背景を読み取る事で面白味が倍増するなと改め思いましたね。映画のメインであるセイウチ人間の肉体改造も実は中盤迄に終了し後半部の推理紛いな展開が特に酷すぎた印象である。また"人間=残酷な生き物"と肯定され進む世界観も一風違った敵側に寄り添う醍醐味が残った。まず開幕テロップ表示で"実話に元づいた話"と出たんだが,ズバリどういう関連性なんだ笑..全体の結論を先に出せば,低評判な指標に衒い敵視点で観ればカルト級に堪能できた!!..佳作級の発掘映画であったね。何より残酷感漂う悪役像の実在感!!が映画全体の勝因に思えました。

まず作品の構造,過去作品を通じ例を挙げれば融合物『ザ・フライ』や『ムカデ人間』感の嫌悪感を彷彿と。ただ,裏腹,ここがこの映画の核を示すメタな部分だと思うんだけど。つまり文明社会を讃え崇拝する(旧世代の)人間が殷賑な米国像を揶揄する映画にも取れた..観た方なら察しが付くよう欺瞞,強欲,無関心,など自由奔放な米国像にハワードは永年恨み辛み悪態を付き終始ブツブツ嫌気を差していた。つまり見方次第ではカオス級に毒素濃淡で有害度が高い皮肉映画なんだが,視点を衒えば異常な思想を押し通す悪趣味な道楽者が純真とも取れる幼稚な願望を叶えるメランコリア(憂鬱性)な映画なんだということ。

残酷性(前半)と皮肉性(後半)の対比構造も先週ボロクソに叩いた寓作『マーシュランド(2015年)』より遥かに群を抜き優勢で,カメオ出演の大物俳優の役柄を差し置いても抑揚,転調,演出の調整加減は皮肉な恐怖映画として(縫い目のUP描写除き)拡張張り品度の高い映画なのではと。全体を通じアッと驚く場面はほぼないんだが,小粒に加点を積み上げ得点を稼ぐ構造なので描写自体も生産性高くスルメ感覚で旨味を増幅させる映画だと思いましたね。少なく見積もっても後半部の大物俳優を交え皮肉コメディに転化する迄の世界感は特にA級品で絶賛。人間を人体改造する冷酷非道な人間が本当に実在し獲物に狙いを定めてそうな恐怖感or残酷的な荒療治を躊躇いなく無表情で成し遂げるサイコパス感など実在感の練り上げ演出は本当見事である。

ハワードの実在感がこの映画の紛いなき勝因!!だと言う事は上述したんだが,付け加えれば彼自身を凶悪な悪役像にアイコン化させた事で背景の見方が多重性を帯びる反映させ方も見事。青年期から抱き続ける卑猥な欲求を果たす為に彼は容赦無き狂気性を振るい落ち着いた物腰で重犯罪に手を染める悪部分の,言わば残酷性(悲劇)...と青年期を通じ過去の漂流時代に経験した清新な冒険談を満面な笑顔を浮かばせ栄光に永年浸る善部分の,言わば幼稚性(喜劇),この二面性を兼ね備え両極端に違う顔を持つ彼がモラル的な側面を台詞内で突如チラつかせ救いを向けるだけに彼自身の実は元々善人なのかも..と敵側に善良な光が差し混む場面もあり彼が完全に悪!!とは捨て切れず視点次第で感動映画にも形を変える話なのかと思えた。

時代に取り残された男が原因の根源に対し訴え掛けるものはやはり説得力がありますよ。だからハワードにも感情移入する余地があった!!..現代文明の軽々しい驕り高ぶりに対し旧来の立場で警鐘を鳴らす役目を彼視点で伺えば確かに担っていた。一般的に見れば彼は生涯抱え込んだ孤独を快楽犯紛いな手段で溝(心の闇)を埋め人体改造をやり続け犯罪思考を持つ異常者..ただ対を衒えば時代に追い付けない孤独者が逆境で異論を唱え続ける善良者側な人間..つまり善人視点の可能性を捨て切れない映画だと。序盤特にハワードの過去冒険談を通じ良き人げな影をみせただけに,彼が勧善懲悪な悪!!と押し付けるのも曖昧で感慨深いものがありましたね。脚本の差し替えを願うなら彼を闇から救い出す話でリメイク映画を製作を希望!!ですよ。

他,物語内でもセイウチ(障害描写)が暴れ出し悪因を挙げざる得ない場面もある。まず現恋人アリーやラジオDJ友人テディの回想場面を通じた主役ジャスティンとの交友譚。コレは結果的に不必要かと。ジャスティン自身の善良な人柄を主張し後半部に感動を持ち上げる演出なのは分かるんだが組み合わせ的な整合性が実に悪い。題材的に老人ハワードとの現代進行で執り行われる場面を更に掘り下げてほしかったよ。あとハワードとセイウチ化したジャスティンが交わる終盤,鯖(エサ)をあげたり,水中に潜らせたり,牙で戯れ合ったりと単に館長とセイウチが"水族館ごっこ"を始め場が地味に終始する話の進展性が突如停滞し前に進まない感じは致命的で否めない。後半部の大物俳優が合流しコメディ調な追跡劇が始まるくだりも大物俳優の俳優色が異常に主張しこの映画自体の持ち味を不発させた。

まあ若干難を呈せば,主役ジャスティンがハワードの過去に経験したアナスタシア号の海難事件による冒険話に対し怪しむ節がほぼなく,ここら辺の陰湿なハワード本人の善と悪を鈍らせる描写が欲しかったなと。同時に2人の会話場面をもう少しゆっくり観たかった感はある。あと脚切断後にジャスティンが目を覚ませば眼下に携帯がナゼか配置されてる設定も意図が読めず敵側からすれば安易な失態では..邦題"Mr.タスク"の由来も冒険話からきてるんだがあの説明では漠然的すぎて腑に落ちない。ジャスティンを騙す為に嘘をつく毒蜘蛛の話も墓穴を掘り安易すぎましたね....

総評。
ポッドキャストでネタを配信する男が終盤で自ら報いを受ける不謹慎な円環構造も綺麗な接続だと思う。前半部のジャスティンがハワード邸に導かれるよう誘い込まれ人体実験の餌食となる構造の下品さは徹底的に排除しクラシカルな雰囲気で空間作りを演出するクリエイティブ精神も喝采。特に1番は上述したよう悪役像ハワードの立体的な実在感が研ぎ澄まされ現実味を帯びた事態なだけにカオス的な理屈or道徳が一切通用せず闇に呑まれる構造自体の持ってき方は見事だと言わざる負えない。ジャスティンはトイレの張り紙を通じハワード邸に導かれる訳だがアレほど張り紙があり本当に偶然⁉︎..な感はあるんだが導入部の描き方も余計な人物がほぼ絡まず方向性を1本化し隙がない構造。中盤,ハワードの冒険話により作品そのものの余地が一元化しなくなる転調が1番映画的に噛み締める価値があるなと,思いましたね。後半部はほぼ触れてませんが大物俳優のアイツが別の意図で作風を破壊しセイウチ並みに大暴れする。適度にファーストフード感覚で堪能できる映画。最終的にも敵側の実在感に尽きるリアリズムな映画でしたね。今月新作『イット・フォローズ』や『クリムゾンピーク』も勿論いいですが,頭を一旦白紙にバカ視点で観れる映画もいいですよ。本作は狂信的な敵視点で観る事をお勧めします!!