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フューリーのごはんのレビュー・感想・評価

フューリー(2014年製作の映画)
3.7
 WW2末期、死屍累々にドイツを侵攻する連合軍。その戦車部隊に、人を殺したことのない新兵ノーマンが配属される。そこでは「ウォーダディ―」と呼ばれるドンという男が指揮していた。彼により、ドイツ軍を皆殺しにしろと叩き込まれるノーマン。ノーマンは戸惑い疲弊するが、少なくともこの戦場にいる限り、彼は変わらざるを得なかった・・・。

 以前劇場で見たんですが、試写やレンタル鑑賞者のゴア描写に関する感想が自分の印象と食い違うなと。そもそも本国でRなのに、日本公開時はGでおかしい。それでレンタル版を鑑賞したところ、戦車に潰される人とか足もげる人とか劇場では無かった気がするシーン確認。動員のためにカットしてた模様。とはいえ意外と印象が違わなかったのは、本編への慣れか、勘違いか、劇場とPC画面の差かもしれない。

 さておき、前半がすこぶるいい。まさに戦争中な情景から始まるが、人が、無機物が、会話が、行為が、とにもかくにも汚い。戦争の中にいる人間と、戦争のために作られたものに高潔なものなど存在しない、世界そのものが汚物だ!と叩きつけてくる映画力を感じた。美しいのは乗り手の軍人を失った白馬だけ。

 同監督の作品では「エンドオブウォッチ」を鑑賞しているが、まさにこの監督だなと。17歳で海軍に入隊しその後映画界に来たたコワモテ。近影こわいです。会話の下劣さが凄くてリアリティがある。(リアルかどうかはわからない。英語わからんし)

 そんな世界観になってしまう説得力は過酷な戦闘描写が請け負う。「殺されれば死ぬ」以外に確かなものが見つからない。平野、市街、どこだろうがここはキリングフィールド。焼け死ぬ、轢かれ死ぬ。殺されたくなければ、殺そうとしてくるやつを、殺せ。

 そんなシーンを経ているからこそ、中盤の占領地のシークエンスが恐ろしい。ピアノ奏でようが食卓を囲もうが、殺戮が始まる準備は四六時中整っている。折角お皿を並べたのにあっというまに食い終わらせて蔑ろにされてしまうシーンに、平和的であろうとすることの頼りなさがグサリと刺さる。攻めこまれたら人類愛も文化も弾丸打ち込まれて終わり。日本の左翼デモはお花畑です。

 占領地編で食事とかあーやこーややってるあたりまでが前半。戦争で脳の伝達物質が偏る感じとでもいうのか、何かが麻痺した世界観を多少なり体感した気分になる。かなりいい。

 そんで後半なんですが、なんかしっくりこなくなる。占領地編の締めくくりがなんか作為的な悲劇で、そのせいかノーマンの変容もどこか薄っぺらい。加えて、戦闘が活劇化してしまう。活劇に振り切るならまだいいが、最後の戦闘はいろんな意味でがっかりする。予算カットのせいで無理やりこしらえたクライマックスのようだ。ドイツ兵はゲームのAIくらいの知能しかないのか?(これ日本兵だったら日本人キレてる) 敵もしっかり描いてくれなければ、仲間キャラの死に感情は付き合えない。鑑賞の前半ではこわばっていた体がどんどん緩んでいくのがわかった。

 詩的なラストシーンでちょっとだけ巻き返し、映画は終わる。結局、中身あるようでないような印象。あまり考えをめぐらせようという気にならなくなった。

 あと、宣伝で割りと推してた戦車の対決シーンばかり期待しても結構がっかりするはず。うーん


 追記

 なんか駄目だったかのような感想になってしまいましたが、前半を劇場で体感できただけで十分満足です。4.0くらい。前半はブラピが来日時に語っていた「理想は平和だが、歴史は残酷だ」がまさに伝わってきて素晴らしかった。だからこそ、後半は違うなと。結局味方の5人に感情が寄ってしまってるのはこの映画をらしくなくしてしまったと思う。