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フューリーのりのレビュー・感想・評価

フューリー(2014年製作の映画)
3.8
丁度、世界史で「第二次世界大戦」を学んでいたため視聴した。教科書では「○○の戦いで○万人が亡くなった」って一言で書いてあるけれど、それぞれ固有の生を歩んできた人達が亡くなっているんだよね。数値に還元してしまうと失われてしまう人生があって、そういう記述から事実を感じとる想像力が必要なんだなと痛感した。平和な国にいると、いつの間にかボケてしまう。それを防ぐために、歴史教育は必要だし、同時に戦争を扱う映画も重要なんだと思う。「人権を守ることは忘却との闘い」であるし、「過去に目をつぶる者は結局のところ現在にも目をつむることになるんだよな。
本作の描写で印象に残ったのは、「戦場に一抹の希望」を見出そうとするドンの姿である。「ままごと」の描写に典型的だけれど、虚構かつ刹那的であれど、一時的な団欒を楽しむ。ここには、凄惨な現実を忘れ、幸せな家庭生活という虚構にまどろみたい欲望が垣間見える。他にも、聖書を引用して会話しているシーンもよかった。思えば、「見ず知らずの誰か」と連帯する、つまりナショナリズムには言語や宗教、身体的同一性が重要なのだなと感じた。宗教を介すことで共通感覚が生まれ、連帯し、仲間意識を強固にすることができる。もちろん、そこには戦場を通して形作られた「絆」
もものを言うが、それら初期前提が必須であろう。
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