とてもとても貴重な作品…。
映像不可能と言われた同名小説をフランチシェク・ヴラーチルが映画化。チェコ映画最高傑作と言われた作品が55年の時を経て日本初公開…。
ストーリーは大まかに13世紀のボヘミア王国。中世の騒乱の中、ひとりの少女がキリスト教に幻滅、"キリスト教的邪悪"となって野に放たれる話。
第1部では若い兄弟アダムとミコラーシュのいるコズリーク一門と敵対するラザロ一門について語られます。そしてラザロの娘…最も純真無垢なマルケータの目を通して物語は進んでいきます。しかし彼女はミコラーシュに犯され純真さを失うことに…。
第2部は修道士ベルナルトを中心に彼の目を通してコズリーク一門の崩壊していく様を描きます。そしてマルケータは彼と出会い、キリスト教に幻滅するのです…。
ストーリー的には宗教、神話的な内容であり、また前後の余韻なく話が飛んだり戻ったりするので、映像を頼りに観て感じ取ります。
常に讃美歌のような教会音楽が流れ、荘厳で神秘的な感覚を耳でも感じます。
長尺で有りながら、卓越した映像に心を奪われます。雪景色の平野や山のロングショット…次の瞬間人物の接写…野原を低空で駆け抜けたり、360度回転するカメラワークは縦横無尽で見応えがあります。
また動物の捉え方もうまく、狼の大群の"静"の映像は構図も素晴らしい。教会のシンメトリーも抜群…。あらゆるシーンが写真集をめくるよう…。ため息が漏れまくり…。
特にマルケータの初登場シーン!うっとりします…。
主人公マルケータはキリスト教ではなく異教徒…意外にもチェコは世界の中で最も宗教人口の少ない国と言われているそうです。キリスト教を中心とするヨーロッパ文化から離れ、自然や神秘の中に信仰を見い出す文化があるようです。
チェコについて知らないことばかりで…とても興味深い作品でした。
タルベーラやタルコフスキー のお好きな方は必見です…そうでない方も…素晴らしい映像に浸って下さい…。