ハッサン

マジック・イン・ムーンライトのハッサンのレビュー・感想・評価

5.0
(私たちは映画のスクリーンを通して、もっともっとウディ・アレンと対話したいのだ)

78歳になった今でも毎年新作を届けてくれるウディ・アレン。彼は年を重ねながら彼自身の「今」を撮り続け、人生を表現している稀有な監督だ。アニーホールをはじめ今まで公開された多くの作品の中では「恋愛の終わり・終わりからの始まり」を描くことで、波のように変化する恋愛の本質「今、この瞬間の思いを大切にすること」を表現してきた。そんなウディが、このマジック・イン・ムーンライトでは出会いのきらめきを余すことなく切り取って描いている。

人生はみじめさ、孤独、苦しみに溢れている。 そしてそれはあまりに早く終わってしまう。合理的で悲観的な考えが頭に定着すると、単純に満足することができなくなる。だから不幸せでいるか、それとも、昇天するほど幸福でいるしかない。出口の無い日常の繰り返しの中で、もう全てを諦めたはずなのに、それでもどこかで今までの人生を180度変えてくれるような出会いがあるとしたら、そんな出会いはまるで魔法である。

私たちにはスタンリーのように、超能力者の瞳の大きな少女との出会いは無いかもしれない。

だけど私たちには映画がある。
映画を観る前と後では世界が違って見えるような体験が出来る。

そう、ウディ・アレンの映画こそ私たちにとって魔法なのである。神はいないかもしれないけど人生は続く。人生の全クリアはまだまだ先だ。私ももっともっとたくさんの感動を知っていきたい。