しゅう

Mommy/マミーのしゅうのレビュー・感想・評価

Mommy/マミー(2014年製作の映画)
4.0
 発達障碍児の親が経済的、精神的、身体的に困難な状況に置かれた場合に法的な手続きを取らずに子を入院させることが認められた架空のカナダの話と聞いて、正直、ドラン監督がその手の話をどう描くのか全く想像できなかったんだけど、観てみたら、成程これはドラン監督の領域だし本当にこれを撮ってくれてありがとうという気持ちになった。上記制度の倫理的是非を問うものではなく、「もしそういう選択肢があるとしたら」をひたすらパーソナルな視点で描く。誰も断罪しない優しい物語だ。それなのに、描かれる感情は苛烈で悲しい。「マイ・マザー」でも描かれた母子の愛とその儘ならなさが更に深化して描かれている。理解できるはずなのに理解してくれるはずなのにどうして、という苦しみ・傷つけ合いに、もうどうしていいか分からなくなる。
 閉塞と開放を繰り返す手法のおかげで、ずっと悲しい気持ちが続くことはないし、開放のシーンがめちゃくちゃ印象的なので観た後内容を思い出すときはなんとなく爽やかな気持ちで思い出せる。重厚なテーマと美しい画面、そして愛についてのメッセージ性。素晴らしい映画だった。またドラン監督の映画を観たい。
しゅう

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