ふうま

Mommy/マミーのふうまのレビュー・感想・評価

Mommy/マミー(2014年製作の映画)
5.0
なんて言ったらいいか分からないぐらい心を揺さぶられた。後半40分ぐらい涙が止まらなかった。
ドランの映画は共通して、世の中のマイノリティな弱者たちがどう社会と向き合っていくかというのがテーマになっていると僕は思っている。
最初からADHDの息子を持つダイアンはずっと強い母親だった。スティーブを甘やかさず、厳しくも優しく接していく。まさに母の愛そのものだった。息子に攻撃する者から絶対に息子を守り、心配する。
スティーブはADHDで、一見何も知らない人からすれば暴力的で無秩序で反社会的にも見える。しかし、実際は母を何より愛し、カイラに対しても謝罪の気持ちを持ったり愛を持って接する。とても純粋で優しい。映画が進むにつれて自分もスティーブの保護者のような気持ちになってくる。汚い言葉を吐いたり、暴れるスティーブだが愛おしく感じるようになる。
個人的にカイラがすごく好きだ。好きな女優さんというのもあるが。スティーブとダイアンの両方を見ているが故にお互いの気持ちを理解しているし、それ故に両方の辛さ、悲しさを感じている。そんなカイラも心の闇を抱えている。家族よりもダイアン達と心を通わせてしまう。それ故、最後がまた切ない。
全体的にアスペクト比1:1で進むが、2カ所だけ広がる。そこはスティーブの世界が満ち足りて自由だと感じる瞬間だと思う。だが、その2つは対称的である。それが最後に選択として訪れる。胸が苦しめられる。
全体として淡く、幻想的な映像になっている。音楽との合わせ方も最高にいい。wonderwallのシーンは元々オアシスが好きだし、見せ方も相まって最高だった。衣装もすごいオシャレだし、カラオケのシーンの色使いもすごい。ここらへんはグザヴィエドランゆえ、さすがの一言。
現実にこの2人を見たら変な目で見てしまうだろうし、実際にスティーブは火傷を負わせたりもしているから、ダイアンも毒親みたいに感じてしまうと思う。カイラも心をぶつけるまでそうだったし。やはり、本当のその人なんて簡単に分かるわけがない。だからこそこうやって、少しずつ知ること、理解しようとすることが大事なんじゃないかと思う。
ふうま

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