進藤先生

あの日の声を探しての進藤先生のレビュー・感想・評価

あの日の声を探して(2014年製作の映画)
4.0
①冒頭、戦禍のチェチェンの街中で侵攻してきたロシア兵士たちの傍若無人ぶりを手持ちカメラで撮影している映像。
撮影している者はその異様な光景を面白おかしくコメントしている…

戦争や紛争を扱う映画でよく見る光景ですが、殺された人には残された家族がいて、殺す側の兵士たちにもそうなってしまった過程がある。

このふたつの視点からこの映画は淡々と物語が進みます。

②残された者、両親を目の前で殺された9才の少年ハジ。
ショックから声を無くし、まだ乳飲み子の弟を連れて絶望的な状況。
この少年が涙を流せば、どうしたって感情移入してしまいこちらも涙が溢れます。

この少年がフランス人の女性キャロルとの交流を通して声を出せるようになり、笑顔を取り戻すまでがキャロルの心情も含めて丁寧に描かれている。

③小さな犯罪から強制入隊させられたロシア人のコーリャは何処にでもいる普通の19才の青年。
軍隊内でのイジメや理不尽な経験を通して心が壊れていく。

イジメられる側からイジメる側に変わる瞬間や、最初は自殺した兵士の死に対して疑問を抱いていたが徐々に死に対して鈍感になり、そして人を殺す事に対してはラストで冒頭の場面に戻る事でこの青年がどうなってしまったのか上手く表現されている。

「アーチスト」の監督らしく少年と女性の心温まる交流や涙の再会などひとすじの光も見せてくれるが、どちらのエピソードも戦争の現実であり戦争の怖さを改めて突きつけられた良作でした。

2015/4/25 TOHOシネマズ川崎
進藤先生

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