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禁じられた歌声のアのレビュー・感想・評価

禁じられた歌声(2014年製作の映画)
3.8
セザール賞、アカデミー賞外国語部門ノミネートもされていたフランス、モーリタニア映画。なんとも締め付けられる良作。
イスラム過激派の弾圧により自由がなくなっていき、歌うことやサッカーも禁じられるティンブクトゥ。そんな中、飼っていた牛を殺されたことをきっかけにひとつの家族に危機が…という話。
なんてたって音楽が半端なく切ない。弾圧されるなかで、一家団欒のうち自然とセッションを始めるシーンの美しさ。歌ったことで罰せられる女が、鞭打ちされながら唄う歌の美しさ。こんな途上の世界が2015年の今でも存在しているんだな、と社会派映画にハマっていた高校生の頃と同様ぽかんと思った。
監督は実際に現地で起こった、男女が砂に埋められ投石の末殺された事件を元にこの映画を作ったそう。Q&Aで監督が言っていたのは「野蛮な行為や、暴力反対のための映画。だが、悪人にも暴力だけではない人間らしさがあること、暴力を静かな暴力として描いた。人が死んだということを、血を流したり暴力だらけのもので描く必要はない」。まさにアメリカの戦争映画とは正反対の、静かな暴力と抵抗。だからアフリカやイスラム圏の映画は、日本人にも入ってきやすいのかな(ドンパチばかりではないから)と思う。
しかしQ&Aで大のおっさんが「ティンブクトゥって、どういう意味なんでしょうか?」…監督も通訳もディレクターも興ざめしていたね。日本人の平和ぼけよ…。知識のなさもだが、そもそも監督にタイトルの意味を聞く失礼さよ(笑)太秦配給でユーロスペースにて公開予定。ティンブクトゥがどこかも分からない日本人に、どう伝えるか、大変だなあ。
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