Higa

アメリカン・スナイパーのHigaのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

●『味方を救いに救いまくっていたヒーローの戦う理由が、結局は、自分たちが「蛮族」と罵るテロリスト達と同じでした』という話。

●米国の英雄のように称えられた人間を、「本質はこんな奴ですよ」と皮肉って批判する作品。イーストウッド監督のような巨匠の立場でなければ、相当な批判に晒されたことだろう。

●敵のエーススナイパーは、“平和の祭典”であるオリンピック出身の選手。彼にも家族と華々しい過去があり、それを米国の天才スナイパーが射殺する。それをさらに殺したのは米国の気の触れた元兵士という悲劇。恐らく、この兵士には悲惨な運命が待ち受けている。

●主人公の妻は、「もう兵の役を降りて他人に任せろ」と懇願する。それでも、彼は既に伝説として担がれていた。結局、彼は敵のエースこそ殺害できたが、戦争を終わらせる役に立ったのかと言われると分からない。彼は何のために、女子供も含めて160人以上も射殺したのか。その数に大喜びする軍人や国民とは何だったのか。

●エンディングの実際の写真や映像は、それこそ皮肉的な演出だろう。あれだけ野蛮人と同じ理由で死体の山を築き上げた奴を大喜びで称える愚かなアメリカ国民。もちろん救われた兵士の家族は彼の死を深く悼むだろうが、「160人殺し」はあたかもヒーローの武勇伝のように語られて終わっていい話ではない。
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