鹿江光

アメリカン・スナイパーの鹿江光のレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
3.8
≪75点≫:英雄が崩れていく。
才能を持ち合わせた“番犬”として、戦地に4度も赴いた男の苦悩。ヒロイズムの空気を漂わせながらも、次第にPTSDによって崩壊していき、自分が戦ってきたもの全てに疑問を抱き始める。
戦場の描写に圧倒されて、うまいこと人物の心象に入り込んでいけないのも事実。実際の出来事の真偽を見極めるのに精一杯で、その中にある苦悩や葛藤や汚い部分を受け止めることが難しい。
まぁあのラストからの無音エンドロールは、英雄的だと批判されても無理はない。でも自分にとってはあれを批判するほどの動機がないというか、それだけ無知であったということでもあるのだけれど……。あの無音の時間をカイルに捧げる追悼のためとするか、国が倒してきた対象とは実のところ何だったのか、と疑問を考えるためのものとするか。どちらにせよ、伝記としてではなく、問題提起の発端としてイーストウッドが国に見せた牙のようにも思えた。
不謹慎と言われるかもしれないが、実際のところ、狙撃するカイルの姿は確かにカッコ良かった。
「伝説の英雄」であり、「ラマーディーの悪魔」でもある。一筋縄じゃあいかない作品だ。
鹿江光

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