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アメリカン・スナイパーのyukacafeのレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
4.0
クリント・イーストウッド監督作10本目。

凄惨なシーンを嫌でも目にしなくてはならないことが想像できるので、普段は戦争を真正面から描いた映画はなるべく避けて通ってしまうのだが、これは絶対に観ておかなくてはならない作品だったと思う。

今も世界のどこかで戦争が起こっているという事実は認識しているつもりだったが、実際に映像で示されたのは、そんな生易しい想像など軽々と打ち砕かれてしまうほどの壮絶さだった。イーストウッドが語った「戦争を美しく語るものを信用するな、彼らは決まって戦場にいなかった者なのだから」という言葉に裏打ちされるように、戦争をするというのはどういうことなのか、その真実が否応なく映し出される。

公開当時は、この映画が戦争を正当化しているのではないかという論争が巻き起こったというが、主人公クリスの葛藤だけでなく、家族や同僚など様々な傷を負った人達の犠牲を見るにつけ、この映画が真に伝えたかったことは戦争賛美などではないというのは明らかだ。現代の戦争でも尚、戦地に派遣された兵士が亡くなったり負傷したり、心に深い傷を負ったりしているという事実を知るきっかけになった。

実話を元にしているということをそれほど意識せずに観ていたこともあって、エンドロール直前で知らされる衝撃の事実には心が痛んだ。戦争での被害は戦場で起こる直接的なことだけでなく、その後も人間の心に大きな傷跡を残す。たった数年前にこのようなことがあったのだという事実を重く受け止めたい。
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