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アメリカン・スナイパーのVolvicinemaのレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
4.2
2014年,アメリカ
監督:クリントイーストウッド

米国史上最も多い、160人もの人間を殺した伝説のスナイパー、クリスカイル。
伝説とは呼ばれたものの、戦争という残虐な世界と、家族との間でもがき苦しんだ男の人生を巨匠クリントイーストウッドが描いた伝記作品。

夢もないままただ漠然と生きる男は、自分の生きる価値を見出すために軍隊に入隊する。
幼い頃から父と共に狩りをしていたクリスは、スナイパーの素質を持ち合わせていた。
狙撃の名手として名を馳せた彼は、いつからか"伝説"と呼ばれるようになっていた。
160人もの命を奪うその役目の裏には、耐え難い苦痛、苦悩、そして目を背けたくなるような事実があったのだ。
伝説という一見輝かしい名を持つ彼だが、その人生は決して明るくなく、憂いに塗れた悲しいものだった。

鑑賞中は、数々の思いが詰まった画面を前のめりになって手に汗を握りながら見つめる自分がいました。
戦地から帰国しても、どこか以前と変わってしまったカイルの姿、身体は戻ってきても、心は戦地にあるような幾度な描写は心に重くのしかかりました。
年を重ねるにつれて、カイルの心身を蝕んでゆく戦争というものに、憎さと、儚さを感じました。
戦地でのこの世のこととは思えないほどの出来事の描写と、走り続ける緊張感はこの上なくリアルで圧巻されました。
80歳にしてもなおこのような傑作を生み出すクリントイーストウッドは本当に素晴らしい方だと思います。