腰

アメリカン・スナイパーの腰のレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
3.9
画面に釘付けになった。1シーンも見逃したくないと思わせる迫力がある。

英雄とされた主人公の戦地での姿と変わっていく様子を交互に見せ、葛藤を描き出す。

戦闘シーンは西部劇のようにかっこいい。これは敢えてそうされているのだろう。弾丸をスローにする演出なんて普通は必要ないし。
その一方で、戦争によって壊れてしまう人々を丁寧に描写する。友は戦争に疑問を感じ、弟は精神を病み、英雄とされた主人公ですらPTSDの症状が出る。
(少し話は逸れるが、『グラン・トリノ』の朝鮮戦争によって心に傷を負った老人などもそうだが、彼らは昔イーストウッド監督のインタビューにあった、「私は現実的な理由からアフガンやイラクへの派兵に反対していた」という発言の"現実的"理由の一つなのかなと思う。)

また、この映画では主人公目線で進むから、敵側は「野蛮人」とされているのだが、ムスタファを登場させ、カイルと同じ雇われた「番犬」であり、「神、国家、家族」のために戦っていることを描くことで、「硫黄島」二部作のように両方の視点があるということも上手く表現している。

人の思想を洗い出す映画だなと思った。おそらくどんな人でも自分の主張の材料となるシーンを見つけることが出来る。
戦争パートでの英雄としての描かれ方や主人公のアメリカ万歳的な発言を切り取って好戦的な映画と捉えることもできるし、子供を撃つシーンやPTSDの描写を切り取って反戦映画と捉えることも出来る。

「あとは自分で考えろ」というのかように、エンドロールは無音である。折に触れて見返して考えるきっかけにしたい作品だった。
腰