ねこたす

365日のシンプルライフのねこたすのレビュー・感想・評価

365日のシンプルライフ(2013年製作の映画)
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タイトルや雰囲気から想像したのはミニマリストのことだったが、蓋を開けるとその反対をいっていた。

モノが好きな主人公が今の生活を省みるべく、オール断捨離を敢行する。そして、それを記録に収めたセルフドキュメンタリー。

ルールは簡単。倉庫に部屋の全ての物を押し込み、そのうち1日一つを取り出すことが出来る。そして、継続する1年間にモノは買わない。

始まってすぐコートに包まり、寒さを凌ぐ。おばあちゃんと冷蔵庫の会話をした後すぐに、2重窓の間で食品を冷やす。なんだか哀れだなあと感じた。

しかし、倉庫の前で何を取り出すか真剣に考える彼を見てハッと気づく。これはミニマリスト的行動ではない。彼は、途方もない数のモノの中から、今日確実に最も必要なモノを選び出そうとしていだのだ。

ミニマリストはモノを減らし選択肢を最小限にすることで、効率的な生活を送ろうとする思想だと理解している。
そう考えると、様相は似ているものの、考え方は真反対。

でも、人間はそうやって豊かになってきたのではないだろうか。必要なものを作り出し、不必要なものを楽しんできた。

ただ、彼の言う"反抗"というキーワードはとても興味深かった。モノに隷属した自分。そんな自分とモノとの関係性を問い直したいという気持ちは伝わってきた。

そう考えると、このルールで残念だったところがある。取り出さなかった日の分のストックが生まれることだ。悩んで必要なかったら、365から減らしてほしかった。それは甘えに感じてしまった。

マズローの欲求段階説よろしく、生命や安全が担保されてくると、少しずつ必要の度合いが上がっていく。おそらく白夜の日差しからカーテンを欲しがり、実家に自動車を取りに行く。

自分の手持ちにないものは、まずシェアや借りられるものがないか探す。いかにも現代的だ。モノを買わないというルールは、買い換えることが出来ないということでもある。壊れたものがあれば、修理することを考える。よっぽど高いモノでない限り、普通の人はさっさと買い換えてしまうだろう。

質素な生活をしていたはずだけど、女が出来てからはコロっと変わってしまう。釣りなんてしないよね~とか言っていたくせに、楽しく彼女と釣りにでかける。しかも、彼女そこそこ可愛いの。おまけに最後の最後まで引っ張りやがって。
それでも、二人でモノを選ぶ様が楽しそうだから許せるかな。

最後の部屋の様子を見ると、なんだかんだ普通っぽい部屋に見えてしまう。それでも、その部屋にあるモノは彼が一つ一つ問い質した成果の表れだと考えると少し感慨深いのである。
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