はっきり言って変わった映画です。
これまでのヤクザ・ギャング映画の系譜とは異なるところにあると思います。
その理由はおそらくジョニー・デップ、彼が主役だからです。
ギャング映画のパターンとしては、グッドフェローズのように「絆とか仁義とか綺麗ごと言うけど所詮でまかせ、最終的には保身に走る。ヤクザはクソ」という話か、もしくは仁義なき戦いのように、「仁義とか信じてヤクザ入ったのに、上司はそれを全く信じてない。俺が本物になるしかない・・・のか?」みたいな話があると思うんですが、この作品は、その二つのどちらでもありません。
どちらにも転びそうな話ではあるんですが、ボスであるジョニー・デップにスポットを当てる映画だからこそ、彼を悪者に仕切ることもできず、善人にするわけにもいかず、結果どちらに落とすこともできない。
結構ビックリするような結論を迎えます。
このバランス意外と面白いし新しいです。
また、ジョニデの演技もキマってます。
基本的に、彼は、内面を描いたり、一人の人間として説得力のある心情の動きといったものはあまりせず、キャラクター的に演技することが多いと思うのですが、今作はそれが非常にうまくいってます。
彼が心理的に変わっていく理由は確かに描かれますが、それが彼にどう影響を及ぼしたのかは演技からは読み取れない。人間的な苦しみが彼からは伝わってこない。ただ、そこにいるのは内面が完全に闇に包まれた、理解不可能な凶暴で非情な化物なのです。そいつが、家族の絆を説きながら家族を崩壊に導いていく。
彼の正体不明の恐ろしさだけが残るいい塩梅です。
いいじゃん、やればできんじゃん、ジョニデ!!
(ちなみに血と骨とか、ジョー・ペシとは違います、彼らはジョニデの理解不能さに比べると非常に人間的です。)