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海街diaryのかのレビュー・感想・評価

海街diary(2015年製作の映画)
3.5
 大きな出来事、ストーリーがひっくり返るほどの事件や事故が用意されているわけではない映画だけれど、全体を通してテンポ感がよく中だるみしない。鎌倉と言うまちをとても魅力的に切り取っていて、そこに住む姉妹を羨ましく思うほどだった。
 俳優陣のお芝居に関しては、すずに想いを寄せる風太役の前田旺志郎が、純朴でまっすぐに演じていてとても良い印象を抱いた。また、最もクスッと笑わさせられたのは佳乃の場面である。佳乃の性格も大いに関係していると思うが、それにしても長澤まさみの間の取り方やテンポ感は気持ちがよく、美貌と力量の両方を備えた俳優だと再認識した。彼女と綾瀬はるか、夏帆の三人は皆説得力のあるお芝居で、(無駄にハラハラさせられることもなく)安心してストーリーを追えた。だが、叔母役の樹木希林、姉妹の母親役の大竹しのぶの二人のお芝居が、場面にリアリティと緊張感をもたらし、作品に重みを与える鍵になっていたように思う。
 また、場面を埋めるだけの無駄な台詞があまりなく、各々のひとことが常に誰かの心情に影響を与えていた。すずの何の気なしのひとことが幸の痛いところを突いたり、母と幸の喧嘩がすずを深く傷つけたり、風太の気遣いがすずを癒したり。印象に残る場面が多かったように思う。
 万引き家族も良作だが、際どいシーンがあるだけに、家族で見られる是枝監督作品としては一番良い作品だな、と個人的には思っている。
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