『万引き家族』『そして父になる』でも扱われた「家族を家族たらしめるものは何か?」という問いかけには、この作品が明快に答えを出している。
鎌倉の古民家に住む三姉妹と、父親が再婚相手との間にもうけた腹ちがいの妹。
彼女たちのあいだに、漆を丁寧に塗り重ねるように、小さなエピソードの数々と季節がゆっくり積み重ねられていく。
はじめはぎこちなかった彼女たちの関係性が、時間の流れを経てこなれていき、自然な風合いを持ち始める。
劇中で何度も繰り返される"梅酒づくり"の描写は象徴的だ。
梅、焼酎、砂糖など、材料を同じ容器に放り込むだけでは当然、梅酒といえるものにはならない。
急がず焦らず、時の流れを待って初めてハーモニーが完成する。
大きな出来事を推進力として進む劇映画に疲れたら、こんな作品に触れるのも良いだろう。
低い位置から這うように人物を捉えるカメラ、菅野よう子の優しい旋律も味わい深い。