YokoGoto

妻への家路のYokoGotoのレビュー・感想・評価

妻への家路(2014年製作の映画)
3.6
チャン・イーモウ監督作品は、実は前作の『サンザシの樹の下で』しか観たことなかった。『サンザシの樹の下で』は、主演女優の存在感しかり、純粋な恋心の表現が優しくて、すごく大好きな作品だ。

チャン・イーモウ監督の最新作である本作は、1977年の文化大革命で引き裂かれた夫婦のお話。20年間、当局に拘束されていた夫が、ようやく帰ってきたものの、妻は心因性の記憶障害を発症し、夫だけ覚えていなかったという悲しいお話。


中国が経済発展する前の話なので、舞台となっている時代には、華やかさもなく薄暗い雰囲気がただようが、どこか品のある画づくりになっているところが、チャン・イーモウ監督の力量なんだな、と感じる。

韓国映画なら、下品とも見えるざらついた表現で綴るところだろうが、本作品にはそれはない。貧困や文明の発達はなくとも、精神は凛とした様を表現している気さえしてくる。

やはり、主要な登場人物を扮する俳優さんも力強く良い。

主演のコン・リーの表情とかは、圧巻。
娘役の女優さんも、時代背景を映し出すかのような気の強い娘像が、物語を引き締める役割をしていてバランスがいい。

チャン・イーモウ監督に出てくる俳優さんは、やはり引き出されているんだな。『サンザシの樹の下で』を観た時もそう思った。

記憶を無くした妻と、それを側で支える夫。
肩を寄せながら、お互いを待っている姿が切なくも美しい。
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