kazマックスグローバーレッド

ウェスト・オブ・メンフィス 自由への闘いのkazマックスグローバーレッドのレビュー・感想・評価

3.8
1993年に起きた「メンフィス3」と呼ばれる冤罪の可能性が高い猟奇殺人事件を追ったドキュメンタリー。この事件を映画化した『デビルズ・ノット』を直前に見たので事件の概要がすごく分かりやすかった。映画で描かれていた血だらけの人がレストランに入ってきた一件は一切出てこなかったけどあれは映画だけの脚色なんだろうか??

無実を主張する少年3人はジェイソン・ボールドウィン16歳、ダミアン・エコールズ18歳、そして知的発達障害を持つジェシー・ミスケリーJr17歳。映画『デビルズ・ノット』では彼らが動物を殺して生贄の儀式に捧げたような事が描かれていて、それが本当ならその件に関してはしっかり処罰して罪を償うべきだと思う。

冤罪に関してはジェシーにはしっかりとアリバイがあるし、女子生徒達は偽証するわ、現場で発見された髪の毛が被害者の男の子を虐待していた継父のDNAと一致して、出るわ出るわの新事実。アメリカではDNAにより証明された冤罪の数は272件で冤罪被害者の合計服役年数は3500年以上って…。

これだけ新たな証拠が出ても判事が検察寄りで聞く耳を持たず公正な裁判とは言い難い。判事も誤ったかもしれない判決を下したからには引くにも引けず保身に走って意固地になってるように思えてくるな。

少年達の弁護団は小さな事務所で調査費用やら資金不足でかなり不利な状況。しかし事件を知った数々の著名人が資金援助を申し出て彼らをサポート。その顔ぶれはイギー・ポップやジョニー・デップにピーター・ジャクソン。「権力を持つ者が闘うすべのない人を虐げるのは許せない」ってPJの言葉が印象に残りました。

結局、10年以上服役してる彼らに提案されたのはアルフォード・プリーという司法取引。何なんだ、この理不尽な取り引きは…。

自由を取るか正義を取るか、これは自由について語るどんなアメリカ映画よりも「自由」という言葉の本質が心に響いたドキュメンタリーでした。