まっつん

アイアムアヒーローのまっつんのレビュー・感想・評価

アイアムアヒーロー(2015年製作の映画)
4.9
よくぞやってくれた!!日本製ゾンビ映画の最高傑作ここに誕生です!!素晴らしすぎて身震いがきました!

花沢健吾の原作漫画は恥ずかしながら未見なのですが、どうやら概ねストーリーは原作に忠実だそうです。

まず特筆すべきは容赦ない人体破損描写の数々!大量の血飛沫と吹き飛ぶ頭!意外性のある描写も多くて非常に良かったです!全編に渡ってこんなに残酷描写満載の映画が全国のシネコンでかかっているとは夢のようだ!どうやらここら辺は「今回はテレビ局が噛んでいないので映画会社でしかやれないことをやろう」という心意気があったのだとか。やはりこの「テレビ局が噛んでいない」というとこに日本映画の未来があるような気がします。


また序盤の「日常が浸食されていく」描写の出来の素晴らしさよ。英雄視点の躍動感抜群のカメラワークから大通りで火事が起き、無数の人が逃げ惑う絵がドーーーーン!!!ってこれを最高と言わずなんと言う笑。しかもそこからのテレ東ネタに大爆笑ですね。テレ東が通常運転を止めたらそれは世界の終わりです笑。

さらに英雄の彼女、てっこがZQNに変貌するシーンも素晴らしかったです。ここは「明らかに人間じゃないものが明らかに人間とは思えないキモい動きをする」というJホラーの伝統を脈々と受け継いでいるように思いました。

ZQNの造形も素晴らしくてですね、かなり血管を強調した造形になっていました。そして秀逸だったのは目の表現ですね。人間ていうのは目が中央じゃなく両端によるとめちゃくちゃ怖いっていうのに気づきました笑。こういう目の表現がなされてるゾンビ映画って見たことが無かったので非常にフレッシュでしたね。

さらには銃描写も徹底的にこだわり抜いてやっているなと思いました。日本社会っていうのは銃を持つことが「基本的には」許されていない社会なので、日本映画での銃描写は観客が銃そのものに慣れていないが故になんか軽く感じてしまうんですよね。その点本作は日本では銃がどういう物なのかをキチンと描いているので非常にリアリティがあります。

そして本作は「負け犬映画」としても非常に良くできていると思います。序盤は英雄の冴えない日常が丁寧に積み重ねられます。そして中盤以降は世界がとんでもない事になってもなかなか立ち上がれない英雄の姿が描かれます。ここら辺が丁寧に積み重ねられているから後半のより大きなカタルシスに繋がっているのだなと思いました。また妄想オチの使い方も最高に上手かったです。終盤での妄想の中でもダメダメな英雄が聞いた言葉、そしてここでの鏡の使い方....そして彼は立ち上がり、ラストの戦いでは一切妄想をせずに現実の敵と戦う!という流れにもう号泣です。

とにかく本作は中盤の森でのシーンが若干鈍重だった以外にはほぼ文句の付けようがない映画だと思います。真剣に今年のベスト候補です。日本映画だってまだまだやれるじゃねぇか!出来るんだ!!