HironoriHara

シェフ 三ツ星フードトラック始めましたのHironoriHaraのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

青い鳥が飛び交い、囁き合う本作。
その青い鳥に翻弄され落ちていった人が落ち着いた所からリハビリする映画である。

ロードムービーの体をとることになるが、最後にはまたホームを得られる。結局どこへ行こうとどこでもホームに出来るのだ。店を得られぬとも、行く場所行く場所がホームになれた。それは時代の力を借りてでもある。
時代に負けて始まったが、遂には時代に捨てられたボロ車をチューンナップし、時代と協力し、その中に生きられるようになる。

あの歳でタブレットやスマートフォンを得て、SNSで遊ぶ息子を見ての通り、今は何でも揃っていて“与えられた環境”で満足できる時代であるが、“与えられた”ものを駆使し、自分から掴まえにいくことの出来る時代でもある。
ツイッターのフォローというシステムの様に自分の気になる情報を中心に得る。テレビで情報の洪水を浴びるのでなく、自分好みの情報を掴まえに行く。ネットという広い世界で狭い世界を得る。その世界に新しくやってくるブームメントという波が化学変化を起こして世界が混じり合ったときに見られるのが、あの移動屋台への人波だ。
掴まえにいったその世界の物好きだけではなく、いわゆるミーハーや野次馬の様なブームメントに触発された人々の人波。それは一種の小さな奇跡かもしれない。
皆、「店へ向かう」という第一歩が大事になる。それが無ければただ奇跡の種が土に埋まっただけの段階で、一歩を行動することが芽吹くことになる。
あの息子も結局はシェフの親とSNSと移動屋台という“与えられた環境”から一歩を踏み出すことで和解と新しい人生を得られた。ネット時代になっても結局世界を動かすのは手の指ではなく足なのだ。

青い鳥が飛び交ってもたらすのは違う世界からやってくる小さな奇跡と和解・第一歩というとても人間的な輝きだった。
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