えいこ

百円の恋のえいこのレビュー・感想・評価

百円の恋(2014年製作の映画)
4.6
冒頭から、何もかも持て余している一子の表情のアップに圧倒される。登場人物のほとんどが、自分にも生活にもウンザリしながら、殺伐とした毎日をやり過ごしている。

目を逸らしたくなる日常なのに、一子を演じる安藤サクラがとにかく素晴らしく、ぐいぐい引きこまれる。体型や姿勢、目つきのやさぐれ感は酷いのに、ふと見せる無垢な表情や優しさが、一子の心根の真っ直ぐさを感じさせ、気がつけばすっかり応援している。

家族も愛情がないわけではなく、いっぱいいっぱいで思いやる余裕がない。だから、一子がボクシングに夢中になり始めてからの目線は温かい。とはいえ、態度が荒っぽくて素っ気ないのもリアルで泣けてくる。

新井浩文演じるボクサーも、完全なクズでもない。みんな裏腹な気持ちを抱えている。一生懸命なヤツが嫌いというのは、心の底では一生懸命に憧れながらなれない言い訳。観る側の一子が観られる側に逆転し、眼光の鋭さ、拳の勢いが増していく様子は小気味よい。テストへの合格、初めての試合、がむしゃらな一子から目が離せずただただ号泣。常に感情に寄り添い励ます音楽も素晴らしい。

根岸季衣演じるおばちゃんも、アクセントとして効いてる。バイならぁ。最高。

傑作でした。
えいこ

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