マクガフィン

百円の恋のマクガフィンのレビュー・感想・評価

百円の恋(2014年製作の映画)
4.3
自分のことを大嫌いな人間が今の自分から一歩でも脱却しようともがく物語。

全編に渡る安藤サクラの覚悟や気迫が漲る熱演と怪演が秀逸で、世間の理不尽な厳しさや仕打ちの不満と怒りをボクシングに転換していく。

ニート時代に甥とゲーム対戦をしている時の丸まった背中&たるんだ脇腹からボクシングをはじめて試合をするにあたり、心技体の成長と豹変は『レイジング・ブル』の逆パターン。体・目つき・雰囲気が変わっていく演技は凄味がある。

唯一残念なのが試合の入場シーン。『レイジング・ブル』からの系統でもある、ボクシング作品の醍醐味のひとつが入場シーンのカッコよさなのだが、会長と安藤サクラの説明セリフが冗長で、セリフが無くても入場曲で理解できるで残念。(入場シーンや控室の演技は素晴らしい)

ボクシングの現実の凄さに虚構はいつも負けるので、映画の中で最も扱いにくいジャンルの一つだと思う。この難しいさをストレートな脚本で映画を成立させた事は、極めて高い演技と熱量に尽きる。脚本と演出の弱さを余裕でカバーする演技に脱帽で、シンプルだからこそ、より伝わることに。安藤サクラが稀代の役者だと再確認。

・2014年 邦画 作品:第3位
・2014年 最優秀主演女優演賞:安藤サクラ「百円の恋」