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ブダペスト市街戦1956 ソビエト軍侵攻のmhのレビュー・感想・評価

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ちゃんとした邦題をつけるなら「サンストリートボーイズ ハンガリー動乱と若者たち」であって、戦争映画というよりハンガリーの歴史モノ。
ナレーションにフリーズフレームというかっこいいOPに身を乗り出すも、モノクロとカラーの混在という素人くさい小細工を見て椅子に深く腰掛け直す。
ハンガリー動乱のはじまりからソ連軍侵攻までを、それに巻き込まれていった若者たち目線で追っている。
作中に登場するポーランドうんぬんはポーランドの反ソ暴動、ポズナン暴動(1956年6月。ハンガリー動乱は1956年10月23日-11月10日)ですね。(ググった)。
エジプトうんぬんは同時期にはじまった、第二次中東戦争(1956年10月29日-1957年3月。スエズ運河問題からはじまる)ですね。(もちろんこれでもググった)
悪名高きハンガリーの秘密警察AVOや、「肋骨レコード」については特に時間を割いてる。西側ジャーナリストからの取材は伏線にもなってる。(写真を取られなかったことで処断を免れる)
勝利のあとで、乱立する政治結社の縄張り争いでは、「ハンガリー自由党(こちらは昔からあるっぽい)」や「未来党」などの名称出てきたけど、これはググってもわからなかった。彩プロならではの低クオリティ字幕が原因というわけではなく、たんにこの映画に関するデータが極端に少ないのだった。
細部も良くって、
・太陽通り団のアジトになる映画館の支配人はもと軍人さん。
・息子が参加しないか心配な母親は息子の靴を隠す。それでも出ていこうとすると、靴を出してきてへそくりを握らせる。
・元カレと今カレに同時に看取られるヒロインの最後のセリフ「愛してる」はどちらに向けてだったのかわからない。(目をつぶっている)
これらに痺れる。
数回しかかけることのできない音の悪い肋骨レコードが、ハンガリー動乱のその後を暗示していたことにも舌を巻く。テーマと密接なプロットはどんなものであれ素晴らしい。
モノクロとカラーの混在というわけのわからん演出以外はかなりクレバーでよくできた脚本なのだった。
ラストにアンジェイ・ワイダ「灰とダイヤモンド」からの引用があるんだけど、これもにくいほど決まってる。
めちゃくちゃ埋もれてるうえに、カテゴリーエラーも起こしてて、見たいひとに届いてないけど、これはなかなかの掘り出し物。
自国の歴史を語ることができなかった旧ソ連の衛星国家が、民主化されてようやく語り直しているという構造自体もいいんだよね。
同じくハンガリー動乱が題材の「君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956」が2006年か。あっちは立派な映画だけど、チープなこっちも負けてない。
面白かった!
mh

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