朧気sumire

さまよう刃の朧気sumireのレビュー・感想・評価

さまよう刃(2014年製作の映画)
4.7
原作小説→日本版→こちら韓国版の順に見ました。
原作のテーマと読後感をズバリ表現した秀逸なタイトル「さまよう刃」ですが、こちらも同じタイトルを飾るにふさわしい映画だった。
俳優の演技、脚本、演出どれを取っても素晴らしい。
原作の再現度が高く、激しく感情を揺さぶってくる。
正直、私は日本版よりこちらのほうが好きです。

韓国映画らしい強烈な描写が娘を殺された父親の復讐劇をより鬼気迫るものにしていて怖い。
とくに父親が犯人グループの一人を殺してしまう序盤のシーンでは凶器を包丁からバットに変更して尺も長く取ったことで、非常にバイレオンスかつ衝動的な仕上がりになっていたのが良い。
「こいつが生きているあいだに生殖器を切り取ってみせて苦しませてやればよかった」と原作で詳細に描写された父親の激昂を地の文がない映画で表現するのは難しいと思っていたけど、視覚的にも強烈な暴力で表現しきったの凄いなって…。
韓国映画の容赦の無さには尊敬します。これくらい思い切り良いのが羨ましい。

原作にあった父親の復讐にかける意思硬さと執念深さの表現にひと役買ったオリジナルシーンも本当に素晴らしかった。本当に上手。このオリジナルシーン提案した人に拍手送りたい。
ラストシーンも原作と同じく「なにが正義なのか」とどうしても答えの出せない迷いを表現していて泣いた。いっぱい泣いた。


宝と言える愛娘を殺したのに犯人は未成年だからと軽い罰しか受けない。
必要悪ってなんなんだろう。正義ってなんなんだろう。
気持ちは分かるが復讐はいけないと思いつつ、父親の復讐が果たされることを願ってしまう。どうしても割り切れない。
この手の事件が再び起きたとき、裁かれるべき存在はなんなんだろう。
復讐で犯人の少年を殺した父親なのか。完璧でない法律なのか。不完全な法律を守るために動く警察なのか。無関心な世間なのか。被害者遺族を弄ぶマスコミなのか。
正義の名を冠する刃は振り下ろす先を見つけれられず、さまよう。
朧気sumire

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