ノリオ

さまよう刃のノリオのレビュー・感想・評価

さまよう刃(2014年製作の映画)
4.0
日本版『さまよう刃』を観たときに思ったことが二つある。
一つは寺尾聰が高校生の娘の父親としてはジジイすぎること。
そしてもう一つは彼の怒りが伝わらないこと、だった。


韓国版『さまよう刃』の怒りは振り切っている。
もう怒髪天を衝くとはこのことで、主人公サンヒョンを演じたチョン・ジェヨンの芝居は観る側に怒りを共有させることに成功している。

光市母子殺害事件のとき、被害者家族の本村さんは、人を殺めた償いはその人間の命でもってしかできないと言っていた。

生きて償え、っていうのはやっぱりどこか詭弁なように当事者だったら思う。

韓国版『さまよう刃』は観客に主人公の“怒り”を共有させ、復讐によってその“怒り”がどこかに昇華される様も体感させてる。イ・ジョンホは日本版を参考にした部分もあるとインタビューで答えながらも、その”怒り”の部分が描けていなかったことにかなり落胆したらしい。

”怒り”を犯人への復讐によって昇華させて、どこかそれにカタルシスすら感じさせる。でもそれを達成したところで実は何も返って来ることはない。
復讐することの無意味さ、けれどそれを実行せずにはいれない矛盾。日本版では空々しかったあのクライマックスシーンも韓国版では胸を突き刺す。

“復讐”に関してはやっぱりお国柄というか、国民性がでるんだろうか。ハリウッドとかリメイクとかしてそれも観てみたいってのはある。
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