とらキチ

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のとらキチのレビュー・感想・評価

3.9
せっかくティム・バートン版の「バットマン」を観たので、間違いなくそこから主人公の設定の着想を得て作られただろう今作を鑑賞。
かつてスーパーヒーロー映画「バードマン」で一世を風靡したが現在では落ちぶれてしまっている俳優リーガンが、ブロードウェイの舞台で再起を図ろうとするが現実と幻想のはざまで追い込まれる。
かつての銀幕のスター俳優が、ブロードウェイの舞台演劇の公演で名声を取り戻そうとする、この設定自体がもう既にパロディのコメディなのだろうと思った。そんな舞台演劇の「Show Must Gn On!」感、緊張感を演出するためのワンカット撮影であったのかな、とも。
でもリーガンが話題となったYouTubeのきっかけとなったブリーフ一丁もたまたま締め出されてしまったからだし、代役のマイクが「リアリティだ」と言って仕掛けて求めてくる身勝手極まりない行為も思い付きのアドリブだし、そしてスタンディングオベーションとなった「無知がもたらす予期せぬ奇跡」そのものも、これらは皆「ハプニング」の結果だと言える。舞台演劇というものが、どれだけ稽古を重ねて努力をしてきても結局は「ハプニング」には負けてしまう、そんな不条理な現実を緻密な計算、準備、段取り、リハーサルが必要な「ワンカット」なカメラワークで撮影された、というのが今作の最大のアイロニーなのではないか。
常にリーガンの背後に控えて、再び飛翔する=ハリウッドに返り咲く為の示唆を、事あるごとにささやいてくる“バードマン”。“バードマン”とは自身の自己顕示欲そのものだからこそ、決して逃れることが出来ない。終盤、そんなリーガンが文字通り“飛ぶ”。その時、リーガンは“バードマン”として羽ばたけたのか、あくまでリーガンはリーガンのままだったか、観ているこちらが現実と幻想のはざまに追い込まれることとなった。
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