はぎはら

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のはぎはらのレビュー・感想・評価

4.7
冒頭にレーモンド・カーヴァーの最後の詩「最後の断章」の一節が引用されます。

「この人生で望みを果たせたのか?果たせたとも。君は何を望んだのだ?“愛される者”と呼ばれ 愛されてると感じること」

主人公(マイケル・キートン)は、コミックヒーローもので一世を風靡したものの、そのあとは鳴かず飛ばずのハリウッド元スター俳優。ブロードウエイの舞台で自ら脚色、演出、主演の作品を上演し、起死回生を狙っています。

そして、自分は愛されるに値する人間か問い続け、悪戦苦闘します。舞台の成功にその答えを求めるのですが、それが答えになるわけもなく、周囲との軋轢を生んでいきます。

長回しのカメラが評判になっていますが、劇場内の閉ざされた空間から、ふっと、カメラが開いたドア越しに屋外の空間を映し出す時、なんとも言えない開放感を味わえます。

何度か使われる劇場のバルコニーのシーンは忘れがたいです!

主人公のアシスタントを務める娘のサム(エマ・ストーン)がバルコニーの手すりに座って、NYの街を眺めています。そこに舞台の共演者マイク(エドワード・ノートン)がやってきます。サムは薬物治療を終えて復帰したばかり、マイクは舞台俳優として名声を博しているものの、役の中でしか人との関係を結べません。

この映画に登場する人物はみんな、人生に溺れそうになりながら、必死で泳いでいる人ばかりですが、そんな人物同士でも、心を通わせ “愛されてると感じる瞬間”があることをバルコニーのシーンは描いています。

ここ数年のアカデミー作品賞受賞作の中では、一番好きな作品です。
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