しゅう

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のしゅうのレビュー・感想・評価

3.5
 大人というものは大なり小なり夢を一度くらい叶えているものだと大人になってから思うようになった。そして、夢が終わった後の人生は長い。衰えた精神と萎びた体で人生の殆どを過ごすことになる。そういう寂寥感というか無常感というかがつねに画面を支配していた映画だった。コメディ調なのにいちいち心の柔らかい部分が痛む。
 バードマンが姿を現した瞬間、この映画このシーンだけは絶対忘れないだろうなと思った。それまで低く恐ろしい声で自分を叱責し甘やかしていたもうひとりの自分は姿を現してみれば安っぽくて滑稽で贋物っぽい何かだったって怖すぎるでしょ。心の底からゾッとした。わたしは自分以外の誰かになりたい。
 サムの「わたしに何したい?」に対するマイクの「目玉をくりぬいて俺の目にしたい。その若さに戻って通りを眺めてみたい。」って台詞超良いよね。この台詞を言ってるときのマイクの中では、サムは女の子ではなく(かつて自分がそうあったような)子どもなんだな。この台詞だけで超最低なマイクをちょっと好きになった。さすがノートンかっこいい。
しゅう

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