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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のりのレビュー・感想・評価

4.2
この世界観が好きや

本映画は、バードマンという過去の栄光に囚われた男が、舞台に挑戦=素の自分を表出し、賞賛を受けたことで自分自身を回復していく物語である。
彼は「父」「夫」という役割以外に、「バードマン」という役割に囚われてしまった。過去に「バードマン」という映画でバードマンとしてまなざされ、スポットライトを浴びたことによるものだ。そのせいか、頭の中では幻聴が聞こえ、超能力(サイコキネシス)が使えるという妄想や、空を飛べる妄想(彼にとっては現実だが)に浸ってしまっている。当人も、バードマンとしてではなくて一人の人間として扱われることを願っている。だから、「バードマン」としてではなく、「彼自身」として注目を浴びることで、自分の存在を塗り替えようとした。

彼の気持ちは分かる気がする。自己認識と他者認識の相違がもたらす葛藤や釈然としない気持ち、それは誰しもが感じたことがあるだろう。たとえば、自分を「優しい」人間だと認識している人がいたとする。彼は、普段は絶対に人に優しくするが、たまたまストレスが溜まっていたこともあり、仲間に強く当たってしまう。それが周囲に漏れ彼は「裏がある、酷いやつ」という認識に。このように、自分の一部だけを見られ、全体だと勘違いされるのは非常に嫌なことだ。映画の中では、自己認識「自分」他者認識「バードマン」だったからこそ、彼は悩みに悩んだのだろう。
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