まるこ

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のまるこのレビュー・感想・評価

4.5

苦かったり・酸っぱかったり・少し甘かったりするミルフィーユみたいな映画。
何層も何層も面白味が蓄積されているのだ。

たとえば、なんといっても演出。
エマニュエル・ツベツキが作り出す長回し映像の複雑なカメラワークの層。
現実と幻想の複雑な境目。
緊迫感漂うジャズドラムと、かと思えば爽快なクラシック音楽の層。
舞台と裏舞台しか主にでてこないのに、そこにいる登場人物を巡って、
自分が緊迫感溢れる“時空を超えたアリの巣”にいるような感覚に陥る。

たとえば、マイケル・キートン自身の層。
この映画自体、ある意味、‘バットマン4’という題名としても成り立つのかもしれない。

たとえば、レイモンド・カーヴァー層。
愛について語るときに我々の語ること。
「愛」とはなにかの問いかけ。
あるものは暴力的な衝動をはらみ、あるものは遠くから見守り、あるものは憎しみへ変わり、
あるものは自分自身を受け入れる。
色々な愛の形。父と娘の愛とは。真実か、挑戦か。

プレビュー含めて4回の舞台を巡って、都度変わりゆく心情。名誉とはなにか。認められるとはなにか。愛とはなにか。自分とはなにか。

こんなたくさんの層が、重なりあって、混ざり合って、なんとも不思議な感覚に落ち入るミルフィーユ映画。
後味も何味だったか最初はわからない。
もう1回食べないと、本当の味がわからない、そんな映画。
まるこ

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