JIZE

きみはいい子のJIZEのレビュー・感想・評価

きみはいい子(2014年製作の映画)
3.5
抱き締める事で問題を否定せず肯定する..個性を無償な愛情で尊重する..全編は純映画なドキュメタリ調で現代社会の子供問題を(3つの短編を元に綴る)群像劇。取り扱う問題もまさに現在進行形な学級崩壊,ネグレクト,虐待,自閉症,いじめ,モンスターペアレンツなど現代に孕む社会問題を大人側が子供目線で吟味し改め導き出す変化前後の機微を映し出す構造。オムニバス形式を取る構成も方向性が1極化せず好感触だった。単に不祥事を抱え込む子供たちを大まかな問題児と分類化せず,個々で個性が違い魅力を備う単一的な子供と敬い距離感を保ちナチュラルな緊張感ある状態で突き詰めた物語性が結果的に心地良く(映画側)が演出(主張)しすぎない。実に惹き寄せられた。昨年に大画面の劇場で観てれば感動度合いも確実に染み渡る部類だった。。

概要。監督はモントリオール世界映画祭で最優秀監督賞を受賞した『そこのみにて光輝く(2014年)』の呉美保監督。主演には高良健吾,尾野真千子,池脇千鶴,高橋和也ら豪華俳優陣が集いました。

高良健吾演じる親米教師でも本作で"ゆとり世代"を代表とし教育に対し情熱を燃やし魂でぶつかる教師像..ではなく,苦痛を諸に表面に出したり現状にボヤく不安定な感じ。要するに彼の内面的な不完全性と大人(社会)側の不明瞭な社会像とが対比を成し彼自身も完全に未だ社会に染まり切らず子供たち同様に潤な目線で現状問題と向き合う。親米教師として奔走するピュアな生き様に演出がなくナチュラルそのもの。不器用だけど生身な姿で立ち向かう姿はやはり不自然でなくいいよ。また尾野真千子演じる若い母親も児童虐待を通じ目を覆う場面があり負の連鎖が脱せない状況で池脇千鶴演じる近所の母親と親しくなる事で深刻な事態に光が差す感じは正反対ながら打開策が開かれ考えさせられますね。

総評。
観客側の想像に委ねる範囲に(映画が)指摘を留めた事で(絶対にこうしなければならないという)模範解答がないor豊富な考え方自体を讃美化する設定..コレが本作の抜き出た賞賛部分に思えた。また(設定的に)父親を取り除いた設定も実直性。要は問題に直視する打開策が中々見出せず苦しみ抜くリアリズム性の導き方が単に綺麗事で処理されず逆に誠実性そのもので機械的な構図を踏まないだけに社会根底に抱える深刻な問題と近距離で自然に向き合う映画なんだと。深刻なドキュメタリ性溢れ世界に胸張り発信できる日本映画の最高峰な部類に入る映画だと思う。監督のネクストレベルな段階にも期待!!本作を是非。
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