かあい

きみはいい子のかあいのレビュー・感想・評価

きみはいい子(2014年製作の映画)
3.8
虐待を受けた過去から、子どもの叱り方が分からず、自分はそんな人間ではないと思いたいが、同じ様に暴力を振るってしまう母親(尾野 真千子)。
受け持ちのクラスでありながらもまとめる事ができず、モンスターペアレンツや他教員から叱責され、仕事のやるせなさと己の無力さに打ちひしがれる日々を過ごす新米教師(高良 健吾)。
周囲から呆けた婆さんと噂され、孤独な一人暮らしをしている心綺麗な老婆(喜田 道枝)。
この3人の視点から物語は展開していく。
育児放棄や虐待、老人の一人暮らしの末の孤独死。昨今のニュースで頻繁に目にする、非日常ではなく日常の延長線上にあるような作品で、ハッとさせられてしまう。
この作品に出てくる人達のように、無言のSOSを発している人は山程いるだろう。子供も大人も。
親から理不尽な扱いを受けても子供は親を求め続ける。自分が悪い子で、良い子になれば愛してもらえるんだと思い込む。
育児放棄され、暴力を受けている生徒が家族から抱きしめられてくるとゆう宿題に、絶対にやってくると声を大にして宣言した姿には涙した。
不安なのは子供だって、大人だって一緒だ。あえて”おとな”と綴られているのが良かった。不安定で完璧じゃない、今にも崩れてしまいそうなおとな達。
彼らが笑顔になる事で子供達も笑顔になり、また新しい1日が始まる。簡単そうで難しいけれど、きっと大切な事。
溜まったものが涙として流れていく場面にはすごく救われた。池脇千鶴が本当に良かった。
静かでいながらも、そっと寄り添って、忘れかけている何かに気づかせてくれるようなそんな作品。現代人にとって大切なものがたくさん詰まっていると思う。
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