前情報なし、ネグレクトもの?くらいのつもりで見たのだけれど…よかった
「そこのみにて光輝く」の呉美保監督作品だということは見終わって知った
なるほど納得
光も上質、誠実で素晴らしかった
高良健吾と子供たち、尾野真千子と池脇千鶴と子供たち、富田靖子と子供と老婦人、三つの物語ががほんの少しずつ重なりあいながら描かれている
なにげにスッスッと心に迫るホッコリなシーンもあって、泣きどころじゃないところでも泣いてしまった
高良健吾のよさ…ありきたりかも知れないけれど透明感、アクのなさ、いい意味での軽さ、あたりなんだろうな、と
けして演技派というわけではないのだけれど、他の役者さんにはない独特の空気をまとっている人だ
その演技には正直首を傾げたくなることもあるのだけれど、この作品に限って言えば、同じ系統の岡田将生、松坂桃李、菅田将暉、福士蒼汰…いずれも違う気がする
なんだこれ?と思いながらまんまと高良健吾の世界に引きずりこまれた「横道世之介」がそうだったように
演技うんぬんではなくその人のあり様、醸し出す空気も役者さんにとって重要な資質なのだとあらためて思った
でも、内田慈がよかったなー、光ってたなー
(以下ネタバレあり)
虐待、障害、モンスターペアレンツ、ママ友づきあい、子育て、教育のタフな状況が描かれる中、それぞれの救いの場所もあるにはあるのだけれど、高良健吾の実家での姉(内田慈)や甥っ子とのやりとりに象徴されるごく普通の日常が、当たり前が当たり前じゃない時代には得がたい小確幸なんだな、と思えて涙が止まらなかった
甥っ子の「がんばって」がビンビン響いた
あるべき関係性、人の幸せ、よりより世の中〜日本の象徴としての桜が効いていた
桜は日本の象徴として捉えられることがあるが、代表的なソメイヨシノは元を正せば一本の木、言いかえればクローンだからこそ一斉に開花もするわけで、その美しさや儚さを手放しに愛でることには賛否ある
そのことを踏まえた上での皮肉めいた象徴かも知れず、そうだとすればこの作品のメッセージをより真摯に受け止めなければと思う