ただ綱渡りをするだけの話である。
だが、予告にも謳われている通り、この映画には至る所に「狂気」が充ち満ちている。
主人公であるフィリップは変人そのもので、軽妙な語り口で次々と彼の人生を語っていく。
観客は知らず知らずのうちに、彼の「狂気」に引き込まれ、そしてクライマックス、世界貿易センタービルの間に張られたワイヤーに、一歩踏み出すところで、完全に一体化する。
その瞬間に現れるのは「神性」である。狂気の果てにある悟りである。
ある意味、この映画は「マッドマックス」と同じところに立っているのかも知れない。