オーケストラのチューニングのような音からこの物語が始まった。
森の木の枝、葉が風でなびいて音を重ねていくように、弦楽器の音が重なっていく。
そんな風に聞こえた。
愛する人間を失った。
人を愛することで得てきたものが、
愛する人を奪われたことでグラスの中の何かが変わった。
グラスの中の何かが変わってしまったシーンで木が強風でなびいていた。
その描写はグラスの心の中、そのものかと感じた。
愛する人を失ったことでグラスの心は、ざわめき、そして強風が吹き荒れている。
愛する人を奪われた復讐。
愛する人を奪われた憎しみ。
グラスを駆り立てるものは大きかった。
復讐の先に、何があるのか。
愛する人を奪われた憎しみ
それが故に復讐に駆り立てられたグラス。
復讐をしても愛する人は帰ってはこない。
復讐をしても憎しみが消えるわけではない。
復讐の先にはグラスにしか味わえない悲しさ、辛さ、狂気、憤り、それ以上のものがあるのだろう。
最後のシーンのグラスの表情、眼ざしが、すべてを物語っている。
人間の命
動物の命
大自然に宿る命
「生命とは」
この作品すべてにおいて考えさせられた。