MitsuhiroTani

ヒットラーのMitsuhiroTaniのレビュー・感想・評価

ヒットラー(2003年製作の映画)
4.5
私が好きな俳優の一人、ロバート カーライルが、英国人として本当に勇気ある決断をしたなと感心した作品。それは、ヒトラー役を引き受けたことではない。唯一無二の悪の化身ではなく、一つ間違えば我々もヒトラーになりえる、そんな気持ちにさせるヒトラーを演じ切ったことだ。
大した不幸でもなく、かといって豊かな才能に恵まれた訳でもない市井の人、異なる意見の相手と向き合い相手を受け入れる器量すらない小心者が、顔の見えない聴衆を相手したとたん雄弁になる。そして、大衆を扇動する唯一の才能に群がる多くの力に翻弄されながら、大衆の圧倒的な力によって偶像化されていく。
本作を観て思った。ネットの世界に時々登場する、強い言葉を武器にする匿名の人。面と向かえば弱く、優しいけれど、ネットの世界では本人の放つ言葉の力が本人の器を超え、本人を飲み込んでしまう。そんな、哀しくか弱き人に重なった。
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