ある男のMitsuhiroTaniのネタバレレビュー・内容・結末

決して嫌いな作品ではなかったが、殺人犯の子供や在日３世エリートという登場人物像達の、アイデンティティからの逃走、という魅力的なテーマがやや希薄になっているのが残念だった。
本監督の持ち味は淡い空気感の出し方にあり、ここにアクの強い俳優をのせることでコントラストを生み、このコントラストの力でテーマを料理することにある。
ところが本作は、淡い空気感もアクの強い俳優達の演技も素晴らしいが、微妙なズレ故にコントラストが無く、結果的に作品のテーマが、何処に紛れて見当たらなくなっていた気がする。
妻夫木、安藤、窪田という抑制の効いた演技巧者を三人も中心に据え、真木、柄本、でんでん、小籔といった濃い演者を同心円の外側に置いてしまったからかな。